序列29番:アスタロト

40の軍団を率いる公爵。地獄の最高実力者の一人とも称される強大な魔神
はい、大物悪魔のアスタロトです。
地獄においてはルシファー、ベルゼブブに次ぐ権力を持つともいわれ、
様々な文献で重要な悪魔として扱われますね。
72柱は一般的知名度の低い魔神がかなり多いですけど、
アスタロトは別格といえます。
72柱や悪魔全般についてほとんど知らなくても、
それなりにゲームや漫画が好きな方であれば名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
で、その姿はどんなものかというと、
ドラゴンのような獣に乗り、手に毒蛇を巻きつけた天使であるとされています。
そして今回の絵は、見ての通りドラクエ2のラスボス、シドーですね。
まあ直接的に似ているかといわれると、そうでもないかもしれません。
(メッセージウィンドウからはみ出すサイズ感ってワクワクしますよね。)
しかし同じく大物72柱である1番バエルにバラモスをあてがった流れからすると、
あながち的外れでもないような気がするんですよ。
悪魔的なデザインでありながら、ドラゴンのようでもあり、
蛇という要素も兼ね備えているシドーは、
アスタロトとの共通点がなくもないでしょう。
またアスタロトは神話上でバエルと近しい関係性にありますので、
両者を2と3のボスという近い間柄で表現する点についてもしっくりきます。
ちなみに、アスタロトはドラクエ10で既に登場しているんですよね。
ドラクエ10ではゴールデンゴーレムの上位種であるセルゲイナスのさらに上位種となっていますが、
これにはちょっとニヤリとさせられます。
というのも、セルゲイナスはソロモン72柱の魔神の内数体を従える上級悪魔サルガタナスの別名で、
さらにこのサルガタナスを従えるのがアスタロトだといわれているんですよ。
ゲーム中でも伝承に忠実な設定がなされているというわけです。
元はこう
19世紀に描かれた地獄の辞典挿絵でのアスタロト。
姿勢がわるいし、あまり美しいとはいえない天使の姿ですね。
いかにも堕天使といった雰囲気。
またがっているのはドラゴンのような犬のような、
なんともはっきりしない獣です。
この絵ではそこまでの実力者に見えませんね。
しかしアスタロトの武器はその身体にまとう強力な毒気だといいます。
別の言い方をすると、ものすごく臭いということです。
そのため近づくことは危険なんだとか。
(臭気については銀の指輪を掲げて防御する必要があります)
この特技はドラクエ的にいえば「もうどくのきり」や「もうどくのいき」といったところでしょう。
女神アスタルテ
地獄において権勢を誇る大公爵とされるアスタロトですが、
強大な悪魔というのはかつて相当な影響力を持った神であったともいえるわけです。
これはバエルも同様ですが、アスタロトもやはり古くから崇拝を集めていました。
ルーツとされるのはフェニキアで信仰された豊穣の女神「アスタルテ」。
実は女性なんですね。
このアスタルテは、さらにもうちょい起源を辿るとバビロニア神話のイシュタル、
シュメール神話の地母神イナンナにまで遡るようです。
(アスタルテはバエルのルーツであるバアルの配偶神でもあります)
大元とされるイナンナは、豊穣、愛と美、戦い、金星を司るとても古い女神で、
紀元前4000年頃から信仰されていたとか。
そしてこのイナンナの神性を引き継いで成立したイシュタルもまた、
非常に重要な女神とされました。
このイナンナ、イシュタルの信仰はオリエント全域に影響を及ぼし、
各地にその属性を引き継いだ女神を成立させたといいます。
それはフェニキアのアスタルテであり、
エジプトのイシスであり、
ギリシャのアフロディーテであり、
ペルシアのアナーヒターであり、
インドのサラスヴァティーでもあるんです。
どんだけすごい女神なのかって話ですよね。
インドのサラスヴァティーは中国・日本に弁才天として伝わっています。
弁才天はみなさんご存知ですよね。
七福神としても有名な女神です。
ということはですよ、もうお気づきかと思いますが、
弁才天とアスタロトは本来同じ神だということですね。
これは驚きです。
ちょっと話がそれましたが、
この偉大な女神がなぜ悪魔堕ちしたのかということなんですけど、
まずユダヤ・キリスト教側から見て普通に邪魔な存在だったということがあります。
バアルがバエルになったのと同じですね。
しかしもう一つ重要なポイントは、
ユダヤ・キリスト教は女性性を否定的に捉えるということです。
ユダヤ・キリスト教は男神である唯一神を信仰する厳格な父性的宗教なので、
女神なんて到底認めることができないというわけです。
愛とか性というのは命そのもののあらわれともいえる神聖なものじゃないかと思うんですけど、
そういったもろもろは「淫ら」なものとして断罪されてしまったんですね。
このような経緯からすると、
大悪魔というのは人間の大きすぎるエゴを一身に引き受けた存在といえなくもない気がします。
堕天後
迫害の末、美しかった女神は毒気をまとう男の悪魔へと変貌させられたわけですが、
悪魔としてのアスタロトは堕天した座天使たちの長であり、
地獄の西方を支配しているともいわれています。
(地獄では主計長官の職についているという話も。)
西方の支配者というと9番のパイモンとポジションがかぶっている
西方といってもおそらく広いので分割統治をしているのかもしれま
またその能力としては、過去、現在、未来について教える、
ただ人を怠惰へ誘うため少々やっかいですね。
まあそれ以前にものすごく臭いんですけど。
ちなみに、
その際は「自分が受けた罰は不当なものである」ということを熱く主張
これは女神アスタルテの立場からすると、
創作におけるアスタロト
なにしろメジャーな悪魔なので、様々な創作においてその活躍が見られます。
ゲームではドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、女神転生などの有名シリーズにも軒並み出演していますね。
どれも共通して通常の敵よりも強いボスキャラかそれに準ずる扱いになっています。
特に女神転生シリーズでは「本来の姿を取り戻し女神イシュタルとして復活する」という神話に基づいたマニアックな展開もあったりして面白いですね。
最近はソロモン72柱の魔神を元ネタにしたガンダムシリーズ、「鉄血のオルフェンズ月鋼」にもガンダムアスタロトとして登場しました。
(バルバトスと同じく、画像検索をかけた際のモビルスーツ占有率がえらいことになっています)
創作でのアスタロトは男キャラとして描かれることもありますが、
本来の姿を反映した女性キャラとして描かれることもしばしばのようです。