序列32番:アスモデウス

72の軍団を率いる王。七大罪の「色欲」を司る72柱の筆頭格
ベレト、ガープ、ベリアルとともに72柱の魔神を取りまとめるとされる強大な魔王です。
一般的知名度でいえばアスタロトなどにはやや劣るかもしれませんが、
それでも悪魔界ではかなり有名なほうでしょう。
また名前がいかにも大物っぽい響きでかっこよくないですか。
アスモデウス。
アスモダイ、アスモデなどと呼ばれる場合もありますが、
絶対強いですよこの感じは。
で、その姿は人間、牡牛、牡羊の三つの頭にガチョウの足と蛇の尾を持つというなんとも悪魔らしいスタイルで、
軍旗と毒槍を手にし、さらにドラゴンにまたがりつつ炎まで吐き散らかします。
72柱を見回しても、ここまで悪魔らしい姿をした悪魔というのは珍しいですよ。
いろんな要素を詰め込みすぎですね。
まあとにかくボスクラスの魔神であることは確定していますので、
今回は5のラスボス、ミルドラース(変身後)としました。
怪物的なデザインがアスモデウスの姿とけっこう重なるように思います。
それとアスモデウスは「色欲」を司る悪魔でもあるわけですが、
このミルドラースの絵はなんとなくエロそう(ゲヘゲヘ言いそう)に見えなくもないので、
その辺もいい塩梅になっていると言えるのではないでしょうか。
元はこう
19世紀に描かれた地獄の辞典挿絵でのアスモデウス。
下半身がやや貧相にも見え、かっこいいかと言われると微妙な感じもしますが、
この悪魔的要素がふんだんに散りばめられたケレン味あふれるデザインはグッときます。
それとアスタロトの絵もそうなんですけど、
ドラゴンの顔がいまいちドラゴンぽくないですね。
悪神アエーシュマ
アスモデウスは、ペルシャのゾロアスター教において暴力や情欲を司るとされる悪魔「アエーシュマ」が起源であるといわれています。
ペルシャでは悪魔を指す一般名詞として「ダエーワ」という言葉があるんですけど、
これを組み合わせた「アエーシュマ・ダエーワ」というのがギリシャ、
ヘブライ語圏に輸入される過程で「アスモダイオス」となり、
やがて「アスモデウス」になったのだとか。
このアエーシュマは人に破壊衝動をもたらす悪魔で、
ペルシャでは酒に酔って暴れたりすると「アエーシュマに取り憑かれた」と言ったりしたそうです。
72柱の魔神というのはたいていの場合、元々どこかで崇拝されていた神だった、
というのはこれまで何度も言ってきたとおりですが、
アスモデウスはそのルーツからして既に悪魔なんですね。
筋金入り、生粋の悪魔というのは珍しいパターンです。
まあユダヤ・キリスト教側からの物語的設定に沿って言えば、
かつては天使の最上位階級である熾天使、
あるいは第二階級の智天使に属していたということになるんですけども。
あと個人的にちょっと疑問なのは、
なぜアエーシュマだけがここまで目立つ悪魔としてユダヤ・キリスト教に取り込まれたのかということなんですよね。
というのは、ゾロアスター教にはアエーシュマ以外にもたくさんの大悪魔がいるんですよ。
まず悪神の大ボスとしてはアンラ・マンユ(アーリマン)。
超有名な方です。
またその配下として六大魔王とされるアカ・マナフ、ドゥルジ、タローマティ、サルワ、タルウィ、ザリチェや、
悪竜アジ・ダハーカなんてのもいます。
これらの有名どころの悪魔はユダヤ・キリスト教に組み込まれなかったのでしょうか?
その辺りについての言及というのが見当たらないんですけどどうなんでしょうね。
ゾロアスター教自体は善悪二元論とか、
ユダヤ・キリスト教に多大な影響を与えたとされていますので、
実は知らないところでいろいろ混ざってるのかもしれません。
ちなみにゾロアスター教は徹底した善悪二元論で、
非常にわかりやすい善神VS悪神という構図になっているため、
現代日本の創作においても積極的に取り入れられてますよね。
ちょっと気にかけてみると、意外にいろいろな作品でゾロアスター教の神々の名が見つかります。
(個人的に、中二病がハマる神話関連ベスト3というと、
- キリスト教ソロモン72柱辺り
- ゾロアスター教のアムシャスプンタとヴェンディダード辺り
- 北欧神話全般
ではないかなと思います。)
知識も豊富
高位の魔王ということもあり、
召喚に成功したとしても話を聞いてもらうのはやや難しそうな雰囲気です。
ただ毅然とした態度で接し、かつ丁重にもてなすことを徹底すれば、
幾何学、数学、天文学、工芸学などの諸学問や、
透明になる術、さらには財宝のありかまで教えてくれる上、
「星まわりの指輪」なる万能アイテムまでもらえたりします。
アスモデウスはかなり禍々しい姿で現れるので出現時にはちょっとビビってしまいそうなんですけど、
そこでひるむことなく「あなたはあの有名なアスモデウス王ですよね……?」とかいかにもファンっぽく申し出ると、
「こいつわかってんな」という感じになって交渉がうまくいくようです。
おだてるとけっこう機嫌がよくなるみたいなので召喚する際はその辺りをがんばりましょう。
ちなみにアスモデウスは地獄で東方を治めるアマイモンという悪魔(72柱ではない)の配下で、
東方所属の悪魔の副首領であるといいます。
(ついでに魔王のかたわら地獄の遊技場総監という職も兼任)
東方の王というとバエルもいるんですけど、
両者はけっこう近所に住んでいるのかもしれません。
ソロモン王にたてついたり女に取り憑いたり
72柱の中で唯一、ソロモン王に反抗した魔神であるといわれています。
ソロモン王は神から授かった魔法の指輪によって魔神を使役していましたが、
あるときアスモデウスはその指輪を奪い、海に投げ捨ててしまいます。
ソロモン王の無力化に成功し自由になれたと喜んだアスモデウスでしたが、
それもほんの束の間。
王は魚の腹から指輪を奪還し、アスモデウスは再び捕らえられました。
その後、王によって鉄枷をはめられ、しぶしぶエルサレム宮殿の建設に協力したといいます。
アスモデウスがしょぼいのかソロモン王がすごいのか、
ちょっとわからなくなるようなエピソードですね。
また旧約聖書外典のトビト書によれば、
あるときアスモデウスはサラという若い娘に取り憑き、
サラが結婚した相手を七人も絞め殺しました。
この事態を重く見た神は、四大天使の一人であるラファエルを派遣。
新たにサラの夫となるトビアという男性に、
「サラの前で魚の胆汁を燻してみなさい」と指示を出します。
トビアがラファエルの言うとおりにサラの部屋で煙を充満させると、
アスモデウスはいてもたってもいられず、サラの体から飛び出したんですね。
その後あっさりラファエルに捕らえられたアスモデウスは、
エジプトの奥地へ幽閉されたとか。
(ソロモン王から逃げ損ねた一件以来、魚の内臓のにおいが苦手になっているようです。)
この話で気になるのはサラに取り憑いた理由ですよね。
これはなんともはっきりしないのですが、惚れたということでよいのでしょうか。
後世、「アスモデウスは色欲を司る悪魔である」というキャラが固まってくると、
この点に関して「色欲を司るといいながらサラ自身に手を出さなかったのは実は小心者だから」という評価も下されています。
魔王でありながら、ちょいちょい舐められ気味なんですよね……。
創作におけるアスモデウス
まずドラクエシリーズにおいては「アモデウス」という名前で登場してますね。
指揮者姿のモンスターなので、
作曲家「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」と「アスモデウス」をかけたネーミングということでしょう。
そのほかスマホゲーム界隈では近年頻繁に活躍しています。
ざっと見てみただけでも、
パズドラ、モンスト、輝星のリベリオン、黒騎士と白の魔王、ゆるドラシルなどなど多岐にわたります。
またこれは72柱すべてに言えることですが、
最近の傾向としてとにかく女性キャラとして描かれがちですね。
アスモデウスの場合は、色欲を司るという設定を反映してセクシーなキャラになっていることが多いようです。